最近読んだ『科学的な適職(著:鈴木祐)』が面白かったので、少し紹介させてください!
例えば転職するかしないか、独立するかしないか、のようなキャリアの悩みはそもそも「正解がない」ことに加えて、視野狭窄になりやすい(近視眼的な判断になりがちな)性質があるため、逆に深く分析することなく決断してしまう傾向があるそうです。
これに対して、この本では科学的なフレームワークを用いて、悩みに対して客観的な判断材料を用意するためのヒントがたくさん書かれています。
この記事では、フレームワークの紹介というよりは、私が大事だと思ったキーワードをご紹介しながら副業の活用等に触れさせていただきます。
ヘルパーズハイ
社会への貢献によって、人間が持つ3つの欲求(自尊心・親密感・自立性)が満たせる。
社会に貢献しない仕事はないはずなので、いかにして貢献できていることを認識して、ヘルパーズハイになれるか、大事だと思います。銀行員の場合は、無形の商品を扱っているので、意識しないとヘルパーズハイを満たしにくいかなと思います。
銀行の融資担当者であれば、例えば、その資金が強く必要とされているけれどもリスクが高い貸出しにチャレンジするのは、貢献を感じるための取組みとしてアリだと思います。銀行のビジネスモデル上、審査のブレーキがありますので、個人的には営業マンとして取引先に全力で貢献してやろうというスタンスで問題ないと思っています。また、私は銀行員として事業に近づくことが大事だと思っているのですが、リスクを取りに行く姿勢は、結果的に事業に近づくことにもつながりそうです。
裁量権が幸福度を左右する
昇進による幸福度への影響は、給料がアップすることよりも裁量権が拡大することの方が実際には大きい。「自由」ほど仕事の幸せを左右する要素はなく、作業の内容をどれくらい自分の意志で決められるかが、仕事の満足度を大きく左右する。適合派と成長派
「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考える適合派と、「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考える成長派では、1~5年のスパンでは成長派の方が幸福度は高くなる。天職は、自分の中で養っていくもの
仕事への情熱は、「なんとなくやってたら楽しくなってきた」いう感覚から始まる穏やかなプロセス。一見受け身の態度のように見えるが、情熱を自ら生み出すという観点で、実際は天職との出会いを待っている人よりも積極的な考え方。
やらされる仕事より、やりたくてやる仕事の方がやる気が出ますので、裁量権や自由が、仕事から得られる満足度に繋がることは容易に想像できます。とはいえ、年功序列の組織であれば、若いうちからやりたくてやる仕事を創り出すことは難しいと思います。一方で、やりたくてやるような起業に近い副業であれば、裁量権100%で仕事ができますので、本業にはある意味割り切った感覚で取り組んで、副業でやりたいことをやってみるという選択肢もあるかと思います。
それから、自分が本当にやりたい仕事とか天職は何か、とかを日常的に考えることは恐らくあまり建設的ではなく、仕事の中で、情熱の存在を感じられたらそれにしっかり意識を向けてあげることが大事なのかなと思いました。
「快楽のウォーキングマシン」
人間はどのような変化にもすぐに慣れてしまう性質があるため、たとえば宝くじで1億円を当てようが、夢に見たポジションに昇進しようが、長くても1年ほどで幸福度は過去と同じレベルに戻ってしまう。この「快楽のウォーキングマシン」に立ち向かう唯一の方法が「多様」の考え方で、①自分の持ついろんなスキルや能力を幅広く活かすことができる、②業務の内容がバラエティに富んでいる、という2つの条件を満たす職場ほど、幸福度が高くなる。
これに関しては、いま話題のジョブ型雇用よりも従来のメンバーシップ型雇用の方が、一つの会社で「多様」な仕事を経験できるので、幸福度が高くなる、ということが言えそうですね。ただ、一つの組織内で「快楽のウォーキングマシン」に立ち向かう必要はなく、ジョブ型で働きながらも副業を利用して「多様」を求めることは可能ですので、ここでも副業が有力な切り口になりそうです。
それから、「快楽のウォーキングマシン」の作用によって、頑張って得られた状態であったとしても、頑張っていたころの自分を正しく評価してあげられないため、一旦感じた自己肯定感を忘れてしまうという弊害もありそうです。ですので、意識して過去の努力を今の自分が評価してあげる必要があると思います。
自分の変化を正しく予測できない
18歳に「将来は喫茶店をやりたい」と考えていた人が28歳のときにマーケティングに興味があることは普通。「現在の価値観や好みがもっとも優れている」と思い込み、過去に起きたような変化が未来にも起きる可能性を認めない。確証バイアス
自分がいったん信じたことを裏付けてくれそうな情報ばかりを集めてしまう心理。
最後に、自分はどんどん変化しているということと、もともと人間に備わってしまっているバイアスで物事をみていることは、キャリア選択に関わらず、忘れないようにしないといけないと思いました。