ポストコロナにおける人々の「移動」がどのように変化するか、をデロイトが調査した『ポストコロナの移動に関する意向調査(抜粋版)』の中から地方移住に関する話を書かせて頂きます。
コロナ流行を受けて地方移住への関心が高まっているという記事をよく見かけますが、実際どうなのかということに関して調査した結果は下図の通りです。引越を希望する人の割合を①年齢別、②年収別、③現在の居住地別で比較したものです(サンプル:3,120人)。
<引越を希望する人の割合>
①年齢別比較
②年収別比較
③現在の居住地別比較
(出典:「ポストコロナの移動に関する意向調査(抜粋版)」デロイトトーマツコンサルティング合同会社_2020/8/20)
①年齢別では、年齢層が低くなるほど、郊外への引越を希望する傾向が見られます。一方で、コロナ流行前との期間比較ができないので、以前と比べて引越希望が増えているのか減っているのか判明しませんが、郊外への引越を希望する人は全体で4.1%にとどまっていること、4.1%を上回る5.1%の人が都市部への引越を希望していることを勘案すると、コロナを機に郊外への引越を検討している人は多くないと言えそうです。
②年収別では、郊外への引越したい人は高年収層に若干多いことがわかります。もう一つ、傾向として読み取れるのは、「分からない」の割合が年収が上がるにつれて減っているということです。年収が高い人の方が、自分がどこに住みたいのかを考える余裕がある、ということを示しているのかもしれません。
③現在の居住地別では、郊外へ引越したい人は都市部に多いということがわかります。あと注目すべきと思うのが、中核都市に居住する人のうち、郊外への引越を希望する割合が5.0%であるのに対して、都市部への引越を希望する割合が5.8%もいるという点です。もしかすると、コロナ前はもっと中核都市から都市部への引越を希望する人が多かったのかもしれませんが、コロナを経験した後も、中核都市から出る場合に郊外ではなく都市部、と考える人の方が多いということになります。
リモートワークが普及しつつあると言っても、特にサラリーマンの場合、現実的には、どこに住んでても今の仕事が継続できるわけではないでしょうから、地方移住に興味はあっても現実的な選択肢になるには、まだ時間がかかるのかもしれません。
あと、引越希望なしの人、引越したいか分からない人が大半を占めているということは、もし仮に日本中がリモートワークになったとしても、それだけで地方への人口分散が勝手に進むわけではない、ということだと思います。地方の人口問題は改めて難しい問題だなと感じます。